トンネル工事を変える国産継手
SB継手開発プロジェクトの挑戦
ジョイント工業は、創業47年にわたり、トンネルや土木工事の現場向けに、独自開発の特許製品を製造・販売しています。主力の「SB継手」は累計200万本・売上100億円を突破し、多くの現場で高い評価を得ています。
従来のシールドトンネル工事では、ボルトとナットを1本ずつ締めていく「鋼板継手」が主流でした。確実ではあるものの、人手も時間もかかり、シールドマシンの掘進スピードに現場が追いつかない——。こうした課題を背景に、ジョイント工業は「差し込むだけで締結できるワンパス継手」を自社技術で実現するべく、SB継手の開発に踏み出しました。
ワンパス継手への挑戦
2000年代に入り、業界では各社がワンパス継手の開発を加速させていました。当社も競合他社のサンプルを入手し開発の検討を進めましたが、「ジョイント工業ならでは」の答えはなかなか見つかりません。そのなかで、営業と技術を兼ねていた開発者・岩崎は、ボルト同士を噛み合わせて引っ張ると抜けなくなる構造に着目しました。 寝ても覚めてもひたすらアイデアを考え続け、ある夜「ボルトとボルトのネジ山同士を使う方式なら、抜けない継手になるのではないか」とひらめきます。翌日には社長の前でボルトを組み合わせて実演し、ここからSB継手の開発が本格的にスタートしました。
抜けない構造を形にするまで
発想を形にするには、図面だけでは不十分です。M18サイズの試作から始まり、M24・M27と実際の現場ニーズに合わせてサイズを展開しました。 ネジの精度、熱処理の条件、テーパー形状の角度など、どれか1つがずれても強度は出ません。そのため、ネジメーカー、加工メーカー、プレスメーカーなど多くの協力会社と連携しながら、試作と試験を何度も繰り返しました。また、日本品質機構による引張試験で性能を数値化し、要求される強度を満たすまで条件を微調整し続けました。 少人数体制の中で、設計、手配、調整、試験依頼までを一手に担う開発は、時間もコストもかかる挑戦でしたが、「差し込んで引っ張るほど締まる構造」は徐々にその完成度を高めていきました。
現場で磨かれ続けるSB継手
M24・M27を完成させても、当初は「実績がない継手」は図面に採用されにくく、苦戦が続きました。転機となったのは、ある排水トンネル工事でのM16採用でした。この現場での使用実績をきっかけに、SB継手は徐々に評価を獲得していきます。ワンパス構造による省力化・工期短縮に加え、引っ張り強度とせん断耐力を両立しつつ、挿入角度のズレに対してもコンクリートが割れにくい“しなやかさ”を備えている点が高く評価されたのです。
近年では、この“しなやかさ”が改めて注目され、SB継手は再評価されています。
その理由の一つが、メス側に配置された細い小ボルト群(メスボルト)の存在です。複数の小ボルトが受け側として働くことで、雄側のボルトがわずかに斜めに入ったとしても、内部で角度を吸収しながらしっかり固定されます。 他社の継手では、入射角のズレが即座にコンクリートのひび割れにつながるため、作業を止めてやり直す必要があります。しかしSB継手は、こうした再施工のリスクが大幅に低減されるため、結果的に施工時間の短縮、コスト削減につながり、現場からの信頼をさらに高めています。
さらにSB継手は、国内だけでなく海外でも採用が進んでいます。韓国をはじめとしたアジア圏のインフラ工事でも使用されており、現地の厳しい施工条件の中でも性能を発揮してきました。海外メーカーが模倣を試みた事例もありますが、ネジ精度や熱処理の再現が難しいことから、同等性能には至らなかったといわれています。こうしたエピソードも、SB継手の技術的独自性と信頼性の高さを物語っています。
現在、SB継手は国内外のトンネル工事で採用され、地震時の挙動や大深度トンネルでの水圧条件といった厳しい環境の中でもその性能を発揮しています。発想のひらめきから、多くの試作・実験・協力会社との連携を経て生まれたSB継手は、これからもトンネル工事の安全と効率化を支える存在として、現場で磨かれ続けていくことでしょう。